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児童養護施設と里親制度
                                                   ~社会的養護の現在~
1. 社会的養護とは
 子どもは,「その人格の完全かつ調

和のとれた発達のため,家庭環境の

下で幸福,愛情及び理解のある雰囲

気の中で成長すべきである」。日本が

1994年に批准した『子どもの権利条

約』には,こう明記されています。
 

 しかし,保護者による虐待やネグレ

クトは,増加の一途をたどっています。

こうした,保護者の下で生活できない

できない子ども達を社会全体で育てる

ことを,「社会的養護」といいます。その代表格が児童養護施設です。いまや,児童養護施設に入所する子どもの過半数が,保護者等から虐待を受けた経験を持っています。施設は,虐待から逃れるための場所という側面を持ちつつあるのです。
 ところが,その児童養護施設にも課題が山積しており,理想的な養育環境とは言えません。最近はこうした子ども達を家庭で育てる「里親制度」も少しずつ広がってきていますが,日本では馴染みの薄い同制度を浸透させていくには,まだまだ多くの課題があります。


2. 分科会の概要
 当分科会では,社会的養護の中核である児童養護施設と里親制度を中心に,社会的養護の現状と課題を見つめ直し,そこに法律家がどのように関わることができるのか考えたいと思います。
 

 講師には,社会的養護を研究されている長瀬正子先生と,子どもの権利にお詳しい森本志磨子先生をお招きします。長瀬先生には,研究者の立場から,社会的養護
の大枠について,子どもの入所に至るプロセス,入所中,そして退所してからという人生軸に沿って,それぞれの現状と課題を概説して頂きます。続いて,森本先生には,法律家として社会的養護にどのように関わっていくべきかという視点からお話を頂く予定です。
 

 普段、なかなか学ぶ機会がない社会的養護の最前線に触れる貴重な機会です。多くの皆様のご参加をお待ちしております。

■講師
長瀬正子先生 佛教大学社会福祉学部社会福祉学科講師
森本志磨子弁護士

生活保護は「甘え」なのか
               
  ~最後のセーフティ・ネットの危機~

                                           1、生活保護の基準引下げ問題
                        政府は平成25年度予算案に生活保護の

                   基準の引下げを盛り込むことを決定しまし

​                  た。3年かけて総額670億円を削減し、削減

                  幅は最大10%という、生活保護制度が始ま

                  って以来の異例の大幅引下げとなります。

                    貧困問題が深刻になっており、生活困窮

                   者の餓死や孤立死が相次いでいるなかでの

今回の引下げは、生活保護受給者にとっては生存そのものを脅かすものと言えるでしょう。また、ナショナル・ミニマムが下がることで、最低賃金の低下、地方税非課税基準の低下など、さまざまな制度に影響が及び、低所得者層を中心とした多くの人々の生活に多大な影響を及ぼすことが予想されます。特に、子どものいる世帯での引下率が最も高い上、就学援助支給基準が生活保護基準と連動していることから、子ども世代への「貧困の連鎖」を生み出すおそれがあります。

2、生活保護に対する批判の検証
 一方で、不正受給問題や生活保護費のギャンブル費消などを理由とした生活保護バッシングが存在します。これについては、どう考えたら良いのでしょうか。生活保護制度の本質的な問題はどこにあるのでしょうか。生活保護の現場や、当事者の貧困の実態を知り、生活保護バッシングについて検証を行う必要があります。

3、分科会の構成
 当分科会では、生活困窮者支援に携わっている方々にお話を伺い、フィールドワークを通じて生活困窮者自身の声を聞いて、貧困の実情及び生活保護実務の問題点に迫ると共に、生活保護裁判に関わってこられた弁護士の先生方からお話を伺い、法的な観点から、生活保護制度の問題点や引下げ問題について探っていきたいと思います。
 生活保護問題を通じて、社会保障制度のあり方について、一緒に考えてみませんか。

 

■講師
 稲葉剛さん​​

   NPO自立生活サポートセンター・もやい代表理事

   「STOP!生活保護基準引き下げ」呼びかけ人

 小久保哲郎弁護士

   生活保護問題対策全国会議の事務局長

報道による私刑
      ~犯罪報道の在り方について~

                                                  

                                                                                        1.犯罪報道の現状
                     毎日,多くの犯罪報道がなさ

                     れています。特に,社会の注目

                     を集める事件は大きく取り上げ

                     られ,連日報道されます。

                     例えば,先頃話題となったPC

                     遠隔事件では,以下の見出しで

                     報道がなされました。

                     ―「ネット殺人予告:PC遠隔操

                     作片山容疑者逮捕、社長困惑

                     仕事できたのに…』好き嫌い激                   

                     しかったが」―

 本文では,「パソコンマニアで思い込みの激しいところがある」との評価,中学時代の同級生の「何を考えているのか当時もよく分からなかった」との言葉が紹介されています(以上,毎日新聞,2013年02月19日,東京朝刊)。
 私たちは,このような報道を,逮捕されただけで犯人扱いし、プライバシーに踏み込む「報道による私刑」であると感じています。この問題について,一緒に考えてみませんか。


2.分科会の構成
 報道被害に遭われた当事者の方にお話しして頂きます。その上で,元記者の方,弁護士の方を交え,犯罪報道の在り方,法曹としての報道への関わり方についてパネルディスカッションをします。

■講師

 河野義行さん  松本サリン事件被害者
 江川紹子さん ジャーナリスト
 安田好弘弁護士

風営法によるダンス規制問題

 

 

 2010年、六本木とアメリカ村にある有名クラブが無許可営業により摘発され、経営者が風営法違反の容疑で逮捕された。名古屋や福岡での摘発も相次ぎ、2012年には、大阪NOON、西麻布alifeの経営者が逮捕された。風営法第2条第1項第1号、同第3号、同第4号は、いずれも「ダンスをさせ」る営業を風俗営業とし、規制対象(許可制)としているからだ。​

                   1994年、イギリスで「反復するビート

                   を10人以上で聴いていたら逮捕でき

                  る」というクリミナル・ジャスティス法が

                  制定されたが、それに反発するように

                  イビサ島が世界一のパーティー・アイ

                  ランドとして爆発的な発展を遂げた。

                  「反復するビートを10人以上で聴くこ

                  と」自体が違法なはずはない。イギリ

                  スのレイブシーンにドラッグが蔓延し

                  ていたことから、法の目的はドラッグ

                    規制にあったといえよう。我が国では、戦前ダンスホールで売春が横行していたことから「舞踏場取締規則」(1928年・警視庁令)が制定され、1948年、「ダンスホールとか…におきまする売淫…を取締るのが目的」(同年6月15日、衆院治安及び地方制度委員会の質疑)となる風俗営業取締法が制定された。
 

 今日、ダンスは中学校体育の必修科目であり、そもそもクラブで売春が横行しているとの事実はない。ドラッグ規制、騒音規制、粗暴犯規制。それぞれ、個別の法令で規制でき、規制されるべき問題である。日本の若者達(年齢によるカテゴライズではない。)にとってのイビサ島は何処なのか。
 ヒトは、太古から集団で踊るという行為を続けてきた。うたもリズムも、踊りとともにあった。世界各地の先住民族達もそれぞれに自分達の踊りとうたとリズムを持っている。文字を持たない民族はいても、踊りと音楽を持たない民族はないといっていいだろう。ダンスは、人類の原初的な営みである。
 

 では、立法事実の変遷を看過し、恣意的な運用を許す風営法を、いつ変えるのか。某カリスマ国語教師の言葉を借りよう。今でしょ。

■講師

 金光正年さん クラブNOON経営者

 西川研一弁護士 NOON弁護団

  高山佳奈子先生 京都大学教授、刑法

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